【社長のひとりごと】「電気代が上がっている」を、ちゃんと紐解いてみる

先日、自宅に届いた電気料金の明細をなんとなく眺めていて、ある一行で目が止まりました。「再生可能エネルギー発電促進賦課金」。今年度は1kWhあたり4.18円、前の年より5%ほど上がっています。普段なら見過ごす行ですが、自分が再エネと蓄電所の世界で仕事をしているだけに、つい考え込んでしまう。「電気代が上がっている」とひとことで言われがちですが、その中身は一つの理由でできているわけではありません。今日は、なぜ上がっているのかを順番に紐解いてみます。

まず、電気代は何枚もの層でできている

毎月の電気代は「使った電気の量 × 単価」だけで決まっているわけではありません。明細には、電気そのものの値段に加えて、いくつもの費用が層のように重なっています。電力量に応じた「燃料費調整額」、再エネ賦課金、そして単価の内側に溶け込んだ送電網の利用料(託送料金)。「電気代が上がった」と感じるとき、実際にはこのどの層が動いたのかは、月によって違います。ここを分けて見ると、原因がぐっと見えやすくなります。

海上を進む燃料タンカー船。燃料費と円安の象徴

足元の値上がりの主役は、燃料と円安

ここ数年、私たちの電気代を一番大きく揺らしてきたのは、燃料の値段です。日本は発電に使うLNGや石炭の多くを輸入に頼っています。その国際価格が上がり、さらに円安が重なると、輸入にかかるお金は二重に膨らむ。これが「燃料費調整額」という形で、毎月の電気代へほぼそのまま反映されます。つまり値上がりの大きな波は、世界情勢と為替という、私たちの手の届かないところで起きている。ここが、節電だけではどうにもならない理由です。

青空にそびえる送電鉄塔。送電網の維持費

燃料が落ち着いても、下がりきらない理由がある

やっかいなのは、燃料価格が一服しても電気代が元には戻りにくいことです。理由は二つ。ひとつは再エネ賦課金。太陽光や風力で作った電気を国が決めた価格で買い取る原資で、再エネが普及するほど積み上がり、今年度も前年より増えました。もうひとつは送電網の維持費です。全国に張り巡らせた電線や変電設備は老朽化が進み、災害に耐える更新も必要で、その費用は託送料金として私たちの請求書に乗ってきます。どちらも「電気を安定して届ける仕組み」のメンテナンス代で、構造的に右肩上がりになりやすいお金です。

データセンターの光ファイバー配線。AIの電力需要

これから新しく乗ってくる層がAIです

そこへ、新しい層が加わろうとしています。AIです。生成AIの計算を支えるデータセンターは、とてつもない量の電気を食べます。国内の消費電力は、すでに日本全体の3%に迫ろうとしているという試算もある。これだけの電気を安定して送るには、新しい発電設備も、太い送電線も要ります。その整備費用は、将来の電力不足に備える「容量拠出金」や、送電網を増強する託送料金という形で、電気を使うすべての人へ回っていく。AIを一度も触っていない人の家計にも、少しずつ乗ってくるのです。

俯瞰すると、値段を押し上げているのは「ピーク」?

さらに一段引いて眺めると、これらの根っこには共通点があります。需要のピークです。一年で数十時間しかない、最も暑い夏の夕方に合わせて、発電所も送電網も厚めに用意しておく。その余分が、容量拠出金という形でならされ、私たちの請求書に乗っていく。私が関わっている系統用蓄電所は、まさにこのピークをなだらかにするための仕組みです。電気が余って安い時間に貯め、足りなくて高い時間に放す。この「ならし役」がうまく働けば、一番高い時間帯の値段を抑え、ピークのためだけの設備を増やさずに済む。値上がりの構造そのものに、逆向きから効く打ち手だと言えます。

知らずに払うのと、知って払うのは違う

こうして分けてみると、「電気代が上がっている」の中身は、燃料と為替、仕組みの維持費、そしてこれから乗ってくるAIのコストと、いくつもの理由が重なってできていることが分かります。制度が悪い、電力会社が高い、と片づけるのは簡単です。でも、自分の電気代がどんな理由で組み立てられているのかを知らないまま払うのと、知ったうえで払うのとでは、まるで意味が違う。今月の明細の、あの見慣れない一行。私自身、その正体を一つずつたどってみて初めて、ニュースで流れる「電気代高騰」が、遠い経済の話ではなく自分の暮らしそのものの話なのだと腑に落ちました。同じ請求書を毎月受け取っている者として、その実感を少しでも分かち合えたらと思いました。

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