【社長のひとりごと】半導体の次に買われるもの——AIの「川下」で起きていること

こんにちは。今週、株式市場でちょっと面白い動きがありました。6月5日、米国の半導体株指数SOXが一日で10.3%も下落したのです。ナスダックも4.2%安。AI相場、ついに終わりか——そんな声も聞こえてきました。

ただ、大和アセットマネジメントは6月8日のレポートで「今回の下落は一時的な調整で、AI相場は継続する」「バブルとは言い難い」と冷静でした。根拠は、半導体・製造装置株の予想PERが約21倍と、過去平均の26倍台を下回っていること。私も同感です。AIは終わらない。ただ、主役の顔ぶれが静かに広がっている——今日はそんな話を。

まず、お金の規模を見てほしい

グーグル・マイクロソフト・メタ・アマゾンの4社が2026年にAI関連へ投じる設備投資は、合計でおよそ7,000億ドルを超えます。前年比でなんと約77%増。これだけの資金が動けば、潤うのはGPU(画像処理半導体)を作る会社「だけ」では終わりません。

実際、SBI証券は5月27日のレポートで「物色の対象が、AI半導体という“電子まわり”から、電力インフラという“電気まわり”へ広がっている」と指摘しています。金脈に人が殺到するとき、いちばん手堅く儲かるのは、つるはしとシャベルを売る商売だ——昔から言われる話が、いままさに起きています。

川下その1:メモリ

AIには大量の高速メモリが要ります。中でもHBM(広帯域メモリ)は、SKハイニックス・マイクロン・サムスンの3社とも2026年の生産分が「完売」。価格も急騰し、DRAMの契約価格は2026年1〜3月期に前期比プラス95%(TrendForce調べ)。マイクロンの直近四半期売上は136億ドルと前年比57%増で、全部門が過去最高でした。

日本勢にも追い風です。半導体検査装置のアドバンテスト(6857)は今期見通しを上方修正(売上21.8%増)、製造装置の東京エレクトロン(8035)は2026年3月期に売上2.44兆円と過去最高。HBMのウエハー薄化で高いシェアを握るディスコ(6146)にも注目が集まります。半導体「そのもの」より、その周辺の装置が一斉に潤っている構図です。

川下その2:電力

ここが私の本業、再生可能エネルギーに直結する話です。AIデータセンターの電力消費は、IEA(国際エネルギー機関)の予測で2024年の約415TWh(世界の電力の約1.5%)から、2030年には約945TWh(約3%)へとほぼ倍増します。

ところが、電気は作れても運べない。米国では送電網が追いつかず、系統への接続待ちが2,500GW超も滞留しています(IEA・米ローレンスバークレー国立研究所)。心臓部の変圧器(トランス)は世界的な品薄で、納期は約2.5年、大型機にいたっては4〜5年待ち。価格も2019年比でプラス77%です(Wood Mackenzie調べ)。「発電より送電がボトルネック」——これは系統用蓄電所を手がける私が、現場で毎日感じていることそのものです。

日本株でこのテーマを見るなら、まず重電勢。日立(6501、傘下の日立エナジーが米国に10億ドル投資)、三菱電機(6503、受注残が売上2年分相当)、富士電機(6504)、明電舎(6508)。電線・光ファイバーでは古河電工(5801)とフジクラ(5803)が、いずれも過去最高益を更新しました。系統が詰まるほど、電気を運ぶ・つなぐ会社に発注が集まります。米国でも、電力設備のGEバーノバはデータセンター向け受注が前年の3倍に膨らんでいます。

川下その3:冷却

GPUが、熱くなりすぎました。従来のサーバーは1ラックあたり約20kWでしたが、エヌビディアの最新「GB200」は約120kW。次世代の「ルビン」世代では1ラック最大1MW(メガワット)という設計まで公開されています(OCP 2025)。もう空冷では物理的に冷やせず、液体で冷やす「液冷」が必須になりました。米バーティブの受注残は約95億ドル。日本では、データセンター液冷で動くニデック(6594)、液浸冷却を実証した三菱重工(7011)、空調大手のダイキン(6367)が関連します。

整理すると

AIの川下を日本株で追うなら、ざっくり三つの層になります。メモリと半導体装置(アドバンテスト、東京エレクトロン)、電力と送電(日立、三菱電機、古河電工、フジクラ)、そして冷却(ニデック、ダイキン、三菱重工)。GPUを作る会社だけがAI銘柄ではない——これが、今週いちばん腹落ちした視点でした。

ただし、浮かれすぎは禁物です。日経平均はこの4月、史上最速で初の6万円台に乗せましたが、その値がさ上位5銘柄のうち4つがAI・半導体関連。市場の関心が一部に偏る「集中リスク」は確実に高まっています。良いテーマほど、すでに株価へ織り込まれている部分も大きい。だからこそ、熱狂の中心ではなく、その「裏方」に静かに目を向ける。私自身、電力の川下にいる一人として、この構造変化を冷静に、でも当事者として面白がって眺めています。

——というのが、今週の私のひとりごとでした。最後にひとこと。投資は、自己判断で!

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