【社長のひとりごと】AIが賢くなるほど、最後に残るのは「人」だと思う

日曜の朝、株価のニュースを眺めていました。東京の株価が一時7万円台をつけたとか、キオクシアが時価総額で一時トヨタを上回ったとか、そういう景気のいい見出しが並んでいます。半導体メモリの会社が、あの自動車の巨人に肩を並べる。背景にあるのは、もちろんAIです。データセンターが増えれば増えるほどメモリが要る。だからお金がそこへ流れ込む。理屈はわかります。

ただ、その同じキオクシアが、トヨタを超えたと思った矢先に、今度は一日で15%以上も急落して、時価総額が9兆円も吹き飛んだといいます。超えたと思えば、翌日には大きく値を下げる。上がるのも速ければ、引くのも速い。私はこのニュースを見て、心が躍るどころか、むしろ「ああ、これが熱狂というものの正体だな」と、少し冷めた気持ちになりました。

騰落率が並ぶ株式の取引画面

熱狂は、たいてい画面の中にある

私も毎日AIを使っています。ただ、市場が沸いているような「お金を生む投機の対象」としてではありません。私にとってのAIは、どんな仕事でも安心して任せられる、信頼できるパートナーです。見積書の数字を直してもらう、蓄電所の用地リストを整えてもらう、こうしてブログの下書きを一緒に練る。日々の実務を、まるごと預けられる相棒として使っています。

市場の熱狂と、自分の現場。同じ「AI」という言葉でも、見えている景色はずいぶん違います。ニュースの中のAIはお金を生む魔法のように語られますが、私の隣にいるAIは、毎日きちんと仕事を仕上げてくれる、頼れる相棒です。

岩を割いて流れる激流

ブームではなく、その下に流れているものを見る

私が大事にしているのは、ブームそのものではなく、その根底に何が流れているか、です。

この十数年、いくつもの熱狂を横目で見てきました。再エネのFITバブルもそうでしたし、仮想通貨が盛り上がっては冷めていくのも見ました。ブームというのは一過性です。盛り上がっている最中は誰もが「今度こそ本物だ」と言いますが、たいていの熱は引いていきます。キオクシアの一日9兆円も、その振れ幅の大きさが、熱狂の性質をそのまま物語っているように思います。

それでも、熱が引いた後に何も残らないわけではありません。表面の泡は消えても、その下を流れていた本物の変化は残る。私も株を持っていますが、買い方は地味で、もっぱら割安成長株を長期で持つだけです。話題になって高くなったものに飛び乗ることは、まずありません。見たいのは今日の株価ではなく、その会社の底に流れているもの。上澄みの泡か、その下の水流か。私はいつも、水流のほうを見ようとしています。

二人が握手を交わす様子

だからこそ、人と心の時代が来ると思う

ここからが、今日いちばん書きたかったことです。

AIがこれだけ賢くなって、私が感じているのは「怖さ」よりも、むしろ逆のことです。誰もが同じように高性能なパートナーを手にする時代になると、「できること」での差は、どんどん消えていきます。きれいな資料も、それらしい分析も、整った文章も、誰がやってもそれなりのものが出てしまう。技術や情報量で差をつけるのは、年々難しくなっていく。

では、差が消えていく世界で、最後に何が残るのか。私は「人」だと思っています。

蓄電所の用地ひとつ取ってもそうです。AIは候補地のリストも、収支のシミュレーションも、見事に作ってくれます。でも、最後に土地を譲ってくれるかどうかを決めるのは、地主さんの気持ちです。何度も足を運んで、顔を覚えてもらって、「この人になら任せてもいい」と思ってもらえるか。そこはAIには一切代われない、人と人の領域です。業者さんとの信頼も、海外の仲間との関係も、結局は同じ。効率では測れないところで、事業というのは動いています。

効率化が極まるほど、効率で測れないものの価値は、むしろ上がっていくはずです。誠実さ、ご縁、義理、心のこもった一言。みんなが同じAIを使えるからこそ、最後は「何をやるか」より「誰とやるか」が効いてくる。便利になればなるほど、人はかえって人恋しくなる。顔を合わせて話す時間、心を通わせるやり取りが、これからむしろ贅沢で価値あるものになっていくのではないか。私はそんなふうに思っています。

だから私は、AIに任せて浮いた時間を、できるだけ人に会うことに使いたいと思っています。実務は信頼できるパートナーに預けて、自分は人の心に向き合う。そういう時間の使い方にこそ、これからの仕事の値打ちがある気がしています。

それでも、悪い気はしない

自分が毎日隣で使っているこの頼れるパートナーが、世界中の株価を動かし、半導体の会社を自動車メーカーに並ばせたり、その翌日には9兆円を消したりしている。そう考えると、ほんの少しだけ、不思議な気分にもなります。でも面白いもので、そのAIが賢くなるほど、私はかえって人の顔を見に行きたくなる。

日曜の朝に、そんなことを考えていました。

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