【7月16日の再エネ関連耳よりニュース】「時給の上限、来月から3分の1カットね」──働き始めて3年目のバイト先で起きたら怒るでしょう?

こんにちは、合同会社440の山本です。求人票に「時給は最大15円」と書いてあったバイト先が、働き始めて3年目のある日、「来月から上限10円ね」と告げてきたら、あなたならどうしますか。今日はそういう話です。舞台は電力の世界、需給調整市場です。

【何が起きたのか】

7月14日、経済産業省の電力安定供給ワーキンググループで、ある資料が示されました。需給調整市場の一次調整力・二次調整力①・複合商品について、応札価格の上限を15円から10円(/ΔkW・30分)へ引き下げ、2026年9月1日の実需給分から適用してはどうか、という内容です。時給に例えるなら、天井がいきなり3分の1カットです。

上限価格10円への引き下げ提案(資料6 p22)
出典:経済産業省 第4回電力安定供給ワーキンググループ 資料6(2026年7月14日)

【店長(経産省)の言い分】

店長にも言い分はあります。市場を3か月検証したところ、募集に対して札が足りない「応札未達」が続く一方で、上限価格ぎりぎりの高値の札は張り付いたまま。

需給調整市場 募集量・応札量の推移(資料6 p5)
出典:経済産業省 第4回電力安定供給ワーキンググループ 資料6(2026年7月14日)

量ではわずか3%の高価格帯の約定が、お会計(調達費用)の17%を占めていました。しかも14円超の札の7〜9割は蓄電池。「高値で刺していたの、ほぼ君らやで」というわけです。数字だけ見れば、筋は通っているように見えます。

上限価格付近の約定が調達費用に与える影響(資料6 p14)
出典:経済産業省 第4回電力安定供給ワーキンググループ 資料6(2026年7月14日)

【バイト(事業者)の言い分】

しかし、私は言いたい。全商品の取引が始まって、まだ3年目です。それなのに朝令暮改の制度変更を連発し、今度は収益の上限を一気に3分の1カット。これはもう自由市場ではなく、統制経済ではないでしょうか。需給調整市場は、学者と官僚が机上で数字をいじるための箱庭ではないんやぞ、と言いたくなります。世界各国が国策で蓄電池産業を育てているさなか、日本では行政が自ら市場を壊しにいっている──そう見えてしまいます。時給を下げられたバイトは店を辞められますが、建ててしまった蓄電所は辞められないのです。

ちなみに、すでに手を打っている先もあります。系統用蓄電池を手がける上場企業のデジタルグリッド社は、昨年末(2025年12月)の決算説明資料の時点で、この上限価格がいずれ7円台まで下がる前提をあらかじめ織り込み、「中期経営計画は制度変更リスクを考慮して保守的に組んでいるので、目標への影響はない」と説明しています。さすがの一言です。ただ裏を返せば、そこまで見込んでおかないと投資家に胸を張れない世界になってきた、ということでもあります。時給を下げられても淡々と回せる体力があるか。建ててしまった蓄電所を抱える私たちも、同じ問いの前に立たされているのだと思います。

💬 440の見解:日本の蓄電池メーカーが育たない最大の原因をつくっているのは、経産省自身ではないでしょうか。系統用蓄電池バブルを破裂させるのは市場ではなく行政。同業の皆さま、9月までに収益モデルの総点検を。

出典:経済産業省 第4回電力安定供給ワーキンググループ 資料6「需給調整市場について」(2026年7月14日)
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/stable_power_supply_wg/pdf/004_06_00.pdf

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です