こんにちは、合同会社440の山本です。お盆明けの一週間、蓄電所まわりのニュースを並べてみたら、見事に方向がバラバラでした。片方では25MWの計画が消え、片方では蓄電所そのものを売り買いする市場が立ち上がる。今週は「造る」「売る」「回す」の三分岐として整理してみます。
【ニュース①】大和エナジー・インフラ、熊本県錦町の25MW/100MWh蓄電所の開発を中止

▶ 概要:8月17日、大和エナジー・インフラが熊本県錦町で計画していた系統用蓄電所の開発を中止したと報じられました(エネハブ)。規模は25MW/100MWh。理由は系統連系コストの増加です。同社は大和証券グループで再エネ・インフラ投資を担い、蓄電所分野に1,000億円規模の投資方針を掲げてきた陣営にあたります。資金力のある事業者の、しかも100MWh級の案件でも、連系費用の水準次第では止まる。当たり前といえば当たり前ですが、それが実名の中止として表に出たのは重い出来事でした。
💬 440の見解:用地を先に押さえてから系統を調べる順番だと、こうなります。接続検討の回答が出るまで事業性は確定しないという前提で資金計画を組むこと。そして撤退の判断基準を、着手前の工程表にあらかじめ書き込んでおくことです。
【ニュース②】デジタルグリッド、系統用蓄電所の売買マッチングを9月開始

▶ 概要:デジタルグリッド(東証グロース・350A)が8月7日に適時開示を出し、系統用蓄電所の売買マッチングサービスを9月に開始すると発表しました。対象は高圧の蓄電所で、接続検討中の開発段階の案件から運転開始済みの設備まで幅広く扱います。掲載項目が特徴的で、価格・地域・設備構成・使用年数に加えて、ハザードマップに基づく災害リスク、隣家からの距離、アグリゲーター契約の有無まで並びます。登録は無料で、成約時に手数料が発生する仕組みです。
💬 440の見解:災害リスクと隣家からの距離が「掲載項目」になった意味は大きいです。用地の選び方がそのまま資産価値として値付けされる、ということですから。当社が用地の一次スクリーニングでハザード5層の判定を必須にしているのも、まさにこの一点に効いてきます。
【ニュース③】一次調整力の商用運用が広がる。繋いだ後の勝負が始まった

▶ 概要:TAOKE ENERGYが、愛知県豊川市と岐阜県各務原市の2MW/8MWh各1件について、6月12日から一次調整力市場での運用を始めたと公表しています。日本蓄電池の「NC銚子市春日町蓄電所」(1,998kW/8,146kWh)は8月3日に受電を開始(蓄電所ネット)。あわせて需給調整市場の取引会員は7月時点で143社に増えました(エネハブ)。運転開始と市場参加者の増加が、同じ速さで進んでいる状況です。
💬 440の見解:一次調整力は10秒以内の応動が求められる領域で、参入が増えるほど単価は落ち着いていきます。つまり妙味は先行者利益の性格が強い。どの市場で稼ぐかより先に、いつ繋げるかが収益を決める段階に入ってきました。
造る・売る・回す。どこで勝負するかを決める時期
この一週間で並んだ3本は、それぞれ違う場所を指しています。連系コストで造れなくなる案件があり、造らずに買う・売るための場が用意され、繋ぎ終えた設備は運用の勝負に入る。同じ「蓄電所事業」という言葉でも、中身がはっきり分かれてきました。
私たちは用地と接続検討という、いちばん入口の部分にいます。入口が詰まれば①のように案件は消えますし、入口の質がそのまま②の値付けに乗ってくる。ここを丁寧にやることが、結局は全部につながっていると考えています。引き続き現場から見ていきます。

