こんにちは、合同会社440の山本です。今週のAIの話題は「誰に預けるか」「どう統制するか」という抽象的な議論が続きましたが、今日は現場が実際に数えた話を3本集めました。共通していたのは、AIを入れる前に業務を数えていたことです。
【ニュース①】総務の122業務を棚卸ししたら、23業務で年373時間が消えた

▶ 生成AI特化の受託開発を手がけるIrwin&coが、大手建設企業の総務部門でMicrosoft 365 Copilotの活用支援を行った事例を公開しています。最初にやったのは、総務部門の全122業務を棚卸しすること。そのうえで効果の大きい23業務を特定し、Copilotを適用して年間約373時間の削減につなげました。
特徴的なのは進め方です。Irwin&coの担当者が現地に入り、業務の棚卸しと工程分解を自分たちで行っている。業務の中身を理解したうえで、どの工程ならAIに寄せられるかを見極め、実際にCopilotを動かしながら業務に合わせた使い方を実演しました。ツールを配って研修を一度やって終わり、という導入とは対極にあります。(出典:VOIX)
💬 440の見解:削減できたのは122業務のうち23業務、率にして2割弱です。裏を返せば8割は人がやるべき業務として残った。この見極めをせずに全社展開すると、使われないライセンスだけが増えます。当社が蓄電所の用地調査で最初にやったのも、工程を書き出すことでした。
【ニュース②】類似案件を探す45分が5分に──ヤンマーエネルギーシステムの検証

▶ キャディが、ヤンマーエネルギーシステムのエンジニアリング部と約1カ月の集中検証を行った結果を公開しました。対象業務は、顧客に設備仕様を提案する際に必要な、過去の類似案件の特定と技術資料の参照です。技術ニュースや標準図、機器図といった文書群をCADDiにアップロードし、実案件で効果を測っています。
結果は、技術資料へのアクセス時間が50分から26分へと約半減。過去の類似案件を特定する時間は45分から5分へと、最大89%削減されました。検証期間中に実際の案件で過去資料の再利用実績も生まれ、1件あたり1〜2週間の対応期間短縮に寄与。流用率が上がることで、年間数十件以上の提案対応増が見込まれるとしています。(出典:キャディ株式会社 プレスリリース)
💬 440の見解:注目したいのは、減ったのが「作る時間」ではなく「探す時間」だという点です。中小企業の非効率の多くは、前任者が作った資料が見つからないことに由来します。AIに文章を書かせる前に、過去の資料を引ける状態にする方が効きます。
【ニュース③】清水建設、社内AIアシスタント8,000個──作ったのは情シスではない

▶ 8月20日、清水建設が生成AIアシスタント「Lightblue」の活用状況を公表しました。約1年半で利用者は8,800名に達し、社内で作成されたAIアシスタントは8,000個を超えています。
拡大のポイントとして挙げられているのは2つ。建設業務に根ざした技術文書へのAI活用と、市民開発型の活用環境です。情報システム部門が完成品を配ったのではなく、現場の社員が自分の業務に合わせてアシスタントを作れる状態にした。利用者8,800名に対してアシスタント8,000個という比率は、ほぼ1人1個です。誰かが作った便利ツールを全員で使っているのではなく、各自が自分用に作っている、ということになります。(出典:ZDNET Japan/日本インタビュ新聞)
💬 440の見解:8,000個という数字は、8,000回ぶんの業務の棚卸しが行われた証拠でもあります。自分の仕事を分解できない人はアシスタントを作れません。AI活用の社内研修で教えるべきは、プロンプトの書き方ではなく業務の切り分け方だと考えています。
今週のまとめ:数えていない会社は、減ったかどうかも分からない
3社に共通していたのは、AIを導入したことではなく、その前に業務を数えていたことでした。122業務、45分、8,000個。全部、誰かが数えた数字です。
逆に言えば、数えていない会社は削減できたかどうかも分かりません。「AIを入れたのに楽になった気がしない」という声をよく聞きますが、多くは導入前の時間を測っていないので比較ができないだけ、という話に見えます。
当社でも系統用蓄電所の用地調査や接続検討の申請書類づくりにAIを使っていますが、最初にやったのは工程を紙に書き出して、どこに何時間かかっているかを数えることでした。地味な作業ですが、ここを飛ばすと「AIを入れた」以上のことは何も言えなくなります。
来週も現場の数字を拾っていきます。

